人間の身体はすべて食べ物=栄養素から作られています。
現代では栄養の過剰摂取が問題視されることがあっても、栄養素の不足による弊害はあまり着目されていません。しかし、栄養の不足が様々な体の不調や疾病の原因となっています。
栄養療法とは、ビタミンやミネラルなど人間が健康に生活するために必要な栄養を、検査に基づき最適量補充することによって自らの自然治癒力を高め、病気の進行を防ぎ、症状改善さらには病気の予防をする医療です。その方の身体が持つ力を最大限に引き出し、健康になれるようにする治療法です。
これを分子整合栄養学(オーソモレキュラー療法)といい、ノーベル化学賞と平和賞の2つを受賞した、アメリカのライナス・ポーリング博士が提唱した『分子整合医学』に基づくものです。
この治療法による効果はとても幅広く、慢性疲労、倦怠感、貧血、頭痛、脱毛、肩こり、アレルギー、にきび、肌荒れ、アトピー性皮膚炎、生理不順、更提年期障害などの症状を解消することができるのをはじめ、高脂血症(脂質代謝異常)や糖尿病などの生活習慣病、そして抗がん治療の副作用の軽減やがんの予防などにも効果があると言われています。 精神機能についても例外ではなく、イライラ、無気力、 自律神経失調症や心身症、うつ病、パニック障害なども、機能性低血糖症や鉄、亜鉛、ビタミンB群などの栄養素の不足によることが明らかになってきました。また、病気の予防やアンチエイジングや美容にも効果があります。
当クリニックでは、血液検査を中心とした検査結果に基づき、患者さん一人ひとりの状態に応じて、栄養指導や点滴やサプリメントを用いた治療を行います。
従来の対症療法とは全く異なる根本治療であるだけでなく、副作用もほとんどありません。
当院は基本的に身体に必要な栄養素は可能な限り、食事から摂取するべきという治療方針です。
それでも点滴治療やサプリメントをお勧めするのには理由があります。それは、食事のみから栄養素を摂ろうとすると大量に食品を摂取する必要があるということです。
しかし、ビタミンCが必要だからといって大量の果物を摂ったり、ビタミンEを摂るために鰻をたくさん食べるのは現実的ではありません。また、食事からの摂取にこだわりすぎるとすると治療期間が長くなってしまう可能性もあります。 現在、日本ではサプリメントは食品扱いなので品質基準がありません。
一般に売られているものは、ビタミンC2000mg配合となっていても原料の段階でビタミンCが2000mg含まれていればよく、飲むときにどのくらい含有量があるかは規定されておらず、医薬品のように最終製品に対する責任がありません。 当院で使用しているサプリメントは、厚生労働省によって医薬品と同様に監督されているGMP基準を満たしている日本の工場で作られたものです。
ですから高濃度・高品質なものであり、効果や安全性の点からも比類ないものとなっております。原材料は中国のものは一切使用しておりません。
また、点滴療法で使用する高濃度ビタミンC製剤は、アイルランドのマイラン社の工場から冷蔵コンテナで空輸した最高品質の製剤(点滴療法研究会推奨)を使用しております。
検査結果の解釈例
肝機能の指標として認められるAST(GOT)・ALT(GPT)という項目を例にとります。AST(GOT)・ALT(GPT)は肝臓の細胞が壊れた時に血液中に流れる酵素です。 一般的には、これらの値が上昇していると、肝臓が壊れている状態と判断して「肝臓に問題あり」と診断します。
しかし、『分子整合栄養医学』では、これらの値が下がっている時やAST(GOT)とALT(GPT)の値に差がある時にビタミンB6が足りないのでは?と考えます。
ASTやALTは、アミノトランスフェラーゼというアミノ酸の利用に関わる酵素に属します。ビタミンB6は、アミノトランスフェラーゼに活性を持たせるための補酵素です。
ASTやALTはビタミンB6と結合しないと血液中で活性を維持できないため、測定値としては減少してきます。特にALTはビタミンB6と結合したホロ酵素としての形でしか血液中に存在できないといわれています。
これが、ASTやALTの測定値が低い場合や測定値に差があった場合にと“ビタミンB6不足”と考える理由です。
ビタミンB6はどんな働きがあるでしょうか?
ビタミンB6は様々なホルモンを合成する際の重要な要素の一つです。そのためビタミンB6欠乏が不足するとセロトニン、メラトニン、ノルアドレナリンといった重要なホルモンの産生がスムーズに行われなくなります。
その結果、イライラしたり、元気がなくなったり、睡眠がうまくとれなくなったりします。
このようにこれまで行われてきた採血結果を違う視点で見ることにより、栄養素を最適量補充することにより効率的に治療することが出来ます。
参考 皮膚に関わる栄養素の代表例
栄養素名 | 多く含まれている食品 | 皮膚への作用 | どのような皮膚疾患に良いか | 同時摂取したほうが良い 栄養素の例 |
備 考 |
ビタミンA | うなぎ レバー など |
肌荒れ(角化)防止 | ニキビ アトピーなど |
タンパク質 | 粘膜を守る、がん予防、視力強化 |
ビタミンC | 赤ピーマン 芽キャベツ ブロッコリー など |
メラニン沈着防止、コラーゲンの生成・維持 | シミ くすみしわ たるみ |
タンパク質 ヘム鉄 |
たばこ1本によるビタミンC消費量は25mg⇒レモン丸ごと1個分消費 |
ビタミンE | 大豆油 ごま油 うなぎ たらこ など |
老化物質である過酸化脂質の抑制 | シミ | ビタミンC | 食品から1日100mg摂ろうとすると、うなぎなら3~4kg食べなくてはいけない |
亜鉛 | 牡蠣 煮干し ごま など |
皮膚を守り、アレルギーに対抗する。傷のなおりを早くする。 | アトピー 褥瘡 |
タンパク質 ビタミンC |
亜鉛60mg摂るのに、牡蠣なら13個、煮干しなら830匹 |
ヘム鉄 | 魚肉 牛肉 など |
コラーゲンの生合成 | しわ たるみ |
タンパク質 ビタミンC |
有機鉄24mg摂るのに、イワシなら34匹、豚レバニラ炒めなら10人前 |
コンドロイチン硫酸 | 動物の軟骨 山芋 うなぎ など |
保湿力を保つ | しわ たるみ 乾燥肌 |
グルコサミン タンパク質 |
関節の老化予防 |